HALI’Sの粗考

粗考という言葉はありませんが、HALI’Sのスタッフ達は常に様々な事を研究したり勉強したりしています。
その一部を皆様に一読して頂ければ幸いです。

 

ガラスの色についてのノート

吉田晶乃

 

ガラスを扱っていない多くの方々から寄せられる、工芸ガラスに対する質問で多いものは「色はどうやって着けるの?」という問いです。

金属を溶かすのですよ〜、と簡単に片付けてしまいますが、これは、実は、ひと言で説明しにくい非常に複雑で化学的な問題です。

その発色について易しく概要を掴めるようにと、各資料をまとめましたので、一読していだたけましたら幸いです。

 

1.そもそもなんでガラスは透明なの?

ガラスが透明であるということは、人間の可視光線(光の波長380〜770nm)を遮る物質をあまり含んでいないため、光の透過率が大きくなることによります。

無色透明のガラスは可視光線の波長域のどの波長でも、同一に大きい透過率で、

且つ同一に僅かに遮断するために「無色透明に見える」。

光の遮断が大きくなるにつれ、灰色→黒色となっていきます。

 

☆ 透明ガラスの原料には、更に「無色に見える」ように消色剤とよばれる原料を加えてあります。大まかに方法は2種類あります。

化学的消色・・・ガラス原料中に酸化剤(例:硝酸ソーダ)を添加して、ガラス中の二価の鉄分(Fe2+)=青緑色 を、三価の鉄分(Fe3+)=黄緑色 に変えることによりガラスを白く見せる。

物理的消色・・・補色を利用した消色。例えば、青緑色をしているガラスには、補色のピンクまたは紫色を呈する着色剤を微量加えて色味を相殺する。

 

そして、色がついているガラスは、その色の波長(色の波長は750万種に及ぶとされています)がガラス中を透過する場合、透明な色として、反射する場合は不透明な色として感知されます。

※ 例えば、赤色(波長700〜610nm)が、他の波長よりも多く透過すると透明の赤色を感じ、より多く反射されると不透明の赤色を感じる。

 

2.色はなにで着けているの?

ガラスの発色はほとんど全て金属・希土類元素(レアメタル)などの鉱物を、原料に溶かし込むことで得られます。

設備の整った大きなガラス工場では自社で色ガラスを調合し溶かして使うことが多いのですが、個人作家や小さな工房の場合、色の調合会社(絵の具屋さんのような仕事)は様々な配合で多種の色ガラスを作っているので、これを買って使用しています。

また、単純な組成の色であれば自分たちで調合し溶かしている吹きガラス工房などもあります。ただ、原料となる鉱物の多くは有害なので、取り扱いには注意が必要です。

☆ 一般に色ガラスは、ロッド(棒状のガラス塊)、カレット(粗く砕いたガラス)、フリット(ざらめ状のガラス粒)、パウダー(粉状のガラス)や板ガラスなど、様々な形状に加工され販売されていて、作業に適した形状の色ガラスを求めて使用します。

発色に使う鉱物の表

酸化コバルト 瑠璃色
酸化銅 スカイブルー・深い赤色
酸化鉄 青緑色・アンバー
酸化マンガン 紫色
酸化クロム 若草色
酸化ネオジム 薄青紫色
酸化エルビウム 薄ピンク色
酸化セリウム 薄黄色
硫化カドミウム 黄色
セレン化カドミウム(硫化カドミウムと混合して使う) オレンジ色〜赤色
金(王水に溶かす=塩化金) ルビーレッド
酸化ニッケル 灰色(カリの多いガラス素地に混ぜると紫色)
銀(硝酸銀の水溶液) 黄色・橙色・緑色など

 

※色を調合する際に、 鉱物を単体で使用する訳ではないので、あくまで「何色に一般によく使う特徴的な鉱物」という表です。発色に関しては、ガラスの基礎組成(基になるガラス生地にどのような原料が含まれているか)によっても大きく変化します。


ここに挙げた以外にも様々な鉱物が使われています!

 

不透明なガラスは?

ガラス中に、母体と異なる屈折率の微粒子(コロイド)が一様に散在し、光を散乱する(遮る)ことによって不透明なガラスになります。

ガラスを不透明にする役割の材料、乳濁剤としては、

ふっ化物(けいふっ化ソーダ、蛍石、氷晶石など)、アルミナ、リン化合物、硝酸塩類(硝酸ソーダ、硝酸カリ、硝酸バリウムなど)などを様々に組み合わせて使用します。

コロイドの粒子の大きさによって不透明〜半透明へと変化があります。

半透明ガラス

粒子400nm以下

乳白色ガラス

粒子400〜1300nm

白濁ガラス

粒子1300nm以上

※鋳造したガラスなどでよく見かける、多量に含まれた気泡によって白濁して見えるガラスは、コロイドの存在によるものではありません。

 

3.どうやって発色させるの?

さて、色を作る為には、上記にあげたような鉱物をガラス原料に混ぜて溶かすだけではありません。とってもややこしい仕組みがあります。

同じ原料を使っても、基礎ガラス組成や、溶融の諸条件によって色調は全く異なります。

非常に複雑で難しい、私のような化学に疎い者には堪え難い理屈ですので、簡単に3段階にまとめてみました。

イオン着色/コロイド着色

イオン着色とは、ガラス原料に混ぜた着色剤がすっかり溶け込んで発色している状態。

無色のガラスはほとんど光が通過します。そこに有色イオンが含まれることで、通過する光のうちの或る波長が有色イオンに吸収されます。この為に人は、そのガラスに、或る色を感知することができます。

主に寒色系がこの仕組みにあたります。

 

コロイド着色には、大別して3種類あります。

主に暖色系がこれにあたります。

  1. 金属コロイド・・・金、銀、銅などの金属コロイドがガラス中に散在し発色してい      る状態。(金赤、銀黄、銅赤など)

※ 溶融塩を冷却したものに生ずるコロイドを「パイロゾル」と称します。金赤、銀黄、銅赤を発色させる金属コロイドもパイロゾルに属します。

また、粒子の大きさによって発色に差があり、金赤として最適なパイロゾルの大きさは、5〜60nm、70〜100nmで金赤色の限界でこれ以上大きくなると色が濁る。

銅赤は5〜60nmが最適、大きくなるにつれ不透明度が上がり、400〜600nmで不透明赤色となり、この状態をヘマチノン(hematinone)といいます。また、500〜1000nmで金属銅の結晶ができます。ガラス面に平行に配列する結晶片となるので、キラキラとした結晶がガラスの中に見られます。(ラメ入りのガラスといった印象です。)この状態をアヴェンチュリン(aventurine)といいます。

アヴェンチュリンは他の金属着色剤でも生じさせる事ができます。例えば、多量のクロムを加えると緑色の金属結晶を生じる「クロムアヴェンチュリン」が得られます。

そして、銀のパイロゾルによる発色はとても広範囲です。

粒子の大きさ

透過光での色

反射光での色

10〜20nm

黄色

青色

25〜35nm

赤色

緑色

35〜45nm

赤紫色

黄緑色

10〜60nm

青紫色

黄緑色

70〜80nm

青色

褐色

120〜130nm

緑色

褐色

 

※銀を含有する色ガラスは成型時の炎の雰囲気や、併用する発色剤によって著しく変色します。その性質を利用して複雑な色を表すことができます。

  1. 非金属コロイド・・・炭素+硫黄系のアンバーガラスに多く、硫化鉄の非金属コロイドが散在して発色している状態。
  2. 化学的コロイド・・・セレン化カドミウム+硫化カドミウムの混晶の化学的コロイドが散在して発色している状態。(セレン赤など)

 

ガラスの色は、イオン着色かコロイド着色、2種のどちらかの状態にあるということです。

酸化雰囲気/還元雰囲気

ガラスを溶融する際、原料の周囲に酸素が多いか(酸化雰囲気)、少ないか(還元雰囲気)ということです。一般に、酸化雰囲気で溶融すると寒色系に、還元雰囲気で溶融すると暖色系の色が得られます。

③酸化剤/還元剤

化学的に原料を酸化させる、還元させるために加える原料です。

同じ発色剤を使っても酸化させるか、還元させるかによって作られる色は変わります。

酸化剤としては、硝酸ソーダ、硝酸カリウムは代表的で、これらは高温で分解して、酸素と窒素を発生させ(つまり酸化雰囲気にする)、酸化ナトリウムや酸化カリウムとなる。

還元剤としては、炭素、酒石酸カリウムソーダ、ザラメ(砂糖)、金属アルミニウム、金属亜鉛などが一般的です。これらは酸素と結びつき周囲の酸素を奪います。(つまり還元雰囲気にする)

熱的還元剤 酸化錫が一般的に挙げられるが、過熱時に原子価を変えるものは熱的還元剤として通常の還元剤とは区別して扱います。

 

・・・なにやら、訳が分からなくなってきましたね。

銅を例に説明しますと

Cu0   →  Cu+   →Cu2+
銅赤         スカイブルー

銅は、左記のように発色します。


通常の大気には酸素が含まれているので、銅は放っておけばCu2+になろうとします。

Cu+と酸化剤を坩堝に放り込み、ガラスと溶融させると、発生した酸素原子と結びつきCu2+(酸化第二銅)となりスカイブルーの発色をします。

 

赤く発色させたい場合は酸素原子をCu+から引き離さないといけませんので、

Cu+と酸化錫(熱的還元剤)を併せて加熱すると酸化錫の原子価が変わり、Cu+の酸素原子を奪いCu0ができ、銅赤の発色剤となる。

さらに大気中の酸素と結びつかれても困りますので、(=還元雰囲気にしたい)炭素などの還元剤も併せて溶融させれば、銅赤の発色が得られます。

※ 銅赤の発色については還元剤のイメージを掴みやすいようにとやや荒い説明です。

本当は、銅イオンが金属コロイド化する条件や、温度による銅イオンの原子価の変化など複雑極まりない事情が絡まり合って出来る色なのです・・・

以上にまとめた3項目はガラスの色調合の醍醐味といえるのではないかと思いますが、様々な化学的事象が絡み合っていてとても難しい!ので、なんとなく、酸素が多いと寒色系になるんだな、酸素が少ないと暖色系ができるんだな、と思っていただければよろしいかと、思います。

 

そして最後に、どうして寒色系は酸化雰囲気が必要で、暖色系は還元雰囲気が必要なのか、については、幸運なことに偶然、と調べられる文献ではなっております。

ガラスの発色について、ほんの入り口だけのご説明ではありますが、楽しんでいただけましたら幸いです。

ガラスという人が作りだした不思議な素材の魅力が伝わりますとなによりです。

参考文献:「魅惑のガラスノート−解説とその具体例−」 長谷川保和 著/内田老鶴圃

「−ガラスにおける−炎と色の技術」伊藤彰 著/アグネ技術センター

三徳工業HP「ガラス工芸広場」http://www.glass-kougeihiroba.jp/index.html

 

 

 

 

 

 

 


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